サマーゲレンデのカービングターントレーニング企画の第9回目を始めます。
以前の記事で、トゥサイドターンで内倒する原因と解消するためのポイントを書きました。
内倒で悩んでいる方がいましたら、ぜひ以前の記事から読んでいただきたく思います。
そして、今回はトゥサイドターンの内倒を回避するターンの実践編とした内容にします。
私が考えている内倒の直し方として、「どのようにターンを行えばいいのか」を前回の解消法とターン技術を織り交ぜたものをお伝えしていきます。
内倒しやすい方は、今回のターンのやり方をぜひトライしてみてください。
冬にも使える技術ですので、最後まで読んでみてください。
※こちらの記事を読んでコメントしていただいた中に有力な内容がありました。
私自身もトライしたことがある内容であったため、「2019年8月19日」に追記させていただいております。
トゥサイドターンの内倒の直し方①意識の持ち方
トゥサイドターンで内倒しやすい原因や解消するポイントについては、前回の記事で細かく書かせていただきましたので、今回は実際にターンをするときの方法を書いていきます。
実践編に入る前に、まずは意識から改めていきましょう。
この意識次第では、いくらここで紹介した方法でターンをしたとしても、本当の意味で内倒を直すことができないと考えています。
先に結論をお伝えしますと、「板の上にしっかりと乗る」というを意識してほしく思います。
▼板をフラットにした状態
▼ターン中の状態
「板の上に乗る」というのは、上記の画像にある「支持基底面」という、自身を支えるための地面と接している面積の中に「重心」を収めるようにすることを目標に考えていただくのがベストです。
また、重心点とは、 「上半身の質量の中心点」と「下半身の質量の中心点」を結んだところ中点に位置するものと言われています。
この表現ですと、ちょっとわかりづらいですよね。
簡単に説明しますと、上半身と下半身の中心辺りを線で結んだときの真ん中あたりです。
まっすぐに立っていれば、大体おへそあたりになります。
そして、動いているときは、重心点の位置が変わります。
たとえばヒールサイドターンの姿勢です。
わかりづらいですが、重心点はおへそではなく、上半身と下半身を結んだ点になります。
この重心が板の支持基底面内に入っていられる状態が、「板の上にしっかりと乗れている状態」と考えています。
また、内倒についても軽く触れておきます。
内倒とは、ターンしている板の内側に体軸が入ってしまうことを指します。
トゥサイドターンでは、「上半身」や「頭」を傾けすぎていることで体軸が板の内側に倒れてしまいます。
そして、この内倒の直し方を考えたときに、「板の上にしっかりと乗る」ことがとても大切になってくるのです。
ここからが本題です。
よくトゥサイドターンで「雪面に近づいている」という感覚を感じることがあるかと思います。
低くなっているように感じるのは、確かに気持ち良いですが、そこには罠があるのです。
「低くなっている」という感覚の多くは、
・視線が雪面に近くなるように傾く
ということです。
自分からこの感覚を得ようと動くと、上記の画像のように体を屈曲させてしまいがちになります。
これでは、「板が立つ」というエッジグリップに大事なところが疎かになってしまうのです。
まずは「自分から低くなろう」という意識を、一旦抑えて練習してみることをおすすめします。
なお、「上級者はどういう意識なのか」と言いますと、多くの場合、あくまで「板を効率良く滑らせること」や「板を効率良くたわませる、走らせる」ことに意識していることが多いです。
「低くなる意識」は、あくまで板に影響を与えるための補助としての意識としている場合が多いでしょう。
簡単に、内倒しがちな方と上級者の違いを説明しますと、「主軸の意識が違う」ケースが多いということですね。
・内倒しがちな方・・・視覚による低い感覚を得ようとしている
・上級者・・・板に効率良く働きかけることを意識している
ということは、「意識を変える」ことをすれば、内倒を直すことができる可能性があるとも言えるのです。
トゥサイドターンの内倒の直し方②板の上に乗る
上級者の意識に近づけるために板に乗る効果を知る
意識を変えることが内倒を直すポイントということはお伝えしましたね。
それでは、本当の意味で上級者の意識に近づくためにも、板に乗ることによる効果を知っておきましょう。
板にしっかりと乗ることによる効果は、外力に対応できる「荷重」の姿勢が取れるということです。
荷重(かじゅう)とは、板に自らが働きかけるのではなく、外の力(重力・遠心力・雪面効力など)を使った力のかけ方のことです。
よく同じ呼び名の自らの内力で働きかける「加重(かじゅう)」と勘違いされることがありますが、認識は別のものです。
なお、荷重がかけるには、外力に対抗するための傾きや運動などが必要です。
簡単に言いますと、ターン中に適切なポジショニングができていれば荷重がかかります。
荷重はあくまで外力を使うことですので、滑走する際には「しっかりとしたポジション」を取ることが重要になってきます。
ポジションのことについて知りたい場合は、下記の記事に詳しく効果を書いています。
もう少し簡単に効果についてお伝えしますと、
↓
・荷重がかかる
↓
・板がたわむ
ということになるのです。
もっと簡単に考えると、
「板の上に乗る」=「板へ影響を与えやすい」
ですので、板に乗る効果をしっかりと認識して練習するということは、先ほどお伝えした「板に効率良く働きかけることを意識している上級者」と近い意識ができるということです。
板の上に乗る方法
トゥサイドターンで板の上に乗る方法は、以前の内倒について書いた記事に書いた「ノーズ方向に上半身と腰を向ける方法」が効果的です。
また、リーンアウトや目線を上手く活用することがポイントになります。
こちらの細かな解消するポイントに関しては、前回の記事にまとめていますので、割愛します。
記事のリンクは、この記事の概要に貼り付けていますので、そちらの記事をご覧くださいませ。
トゥサイドターンの内倒の直し方③ターンのやり方
角付けのやり方
実際にターンをするために、まずは角付けをする方法を、頭に入れておくことをおすすめします。
角付けの方法は、以前の記事でまとめていますので、そちらを読んでいただけたらと思います。
こちらの記事の「角付けのやり方」と、前回の記事で紹介した「内倒の解消法」を織り交ぜて実際にどのようにターンをしていくのかをお伝えします。
ここでのターンで使う角付けのやり方は、「体軸の移動」と「リーンアウト」です。
内倒しないトゥサイドターンの方法
●ヒールサイドターンの後半で目線をトゥサイドターン方向に目線を送っておく
●ニュートラルポジションを通過してトゥサイドターンに向けて「頭」「上半身」もノーズ方向に向ける
●切り替えの際には「目線」を横に向ける
●前足の足首を曲げる(スネをブーツのタンに当ててブーツをつぶす)
後ろ足もスネをタンに当てて足首を曲げる意識
●前足のアングル方向に骨盤を出していく
骨盤を出して行く方向は、体に対して横ではなく斜面と平行に出していきます。
●ターンが始まったら、すぐに後ろ足のひざを曲げ始めて後ろ足に重心を移動
●前腕は前側のお尻辺りにくっつける意識
●後ろ足のひざを内側に捻りづらい人は、後ろ足のひざを雪面に近づける
●後ろ足のひざを内側に入れられる方は、後ろ足を内側に捻りながら後ろ足側の腰を雪面に落とし込んでいく
●ローテーションしないように耐える
●ターン後半までしっかりと板の上に乗る
●板の向きが横に向き始めたら、肩のローテーションを縦軸で行っていく
●ローテーション兼リーンアウトの影響で体が起き上がるので、板をフラットにする
●ヒールサイドターンに合わせて体を向けていく
▼ひざを雪面につけにいくパターン
▼腰を雪面につけにいくパターン
※意識することが多いので、まずは1つずつ意識して練習してみてください。
慣れてきたら、複数意識してターンをしてみましょう。
トゥサイドターンを成功させるポイント
先程の章でお伝えしたトゥサイドターンの方法をする際のポイントをお伝えします。
目線
まずは、ターン前半は「目線」をできるだけフォールラインに向けないようにすることです。
目線をフォールラインに向けてしまうと、傾こうとする意識が強くなってしまう方がいます。
これでは、角付けが弱い内に板の内側に体を傾けようとしてしまいます。
できるだけ目線の意識は、「ターンの外側に行く」ような意識を持てると、目線を早くローテーションしなくて済むかもしれません。
体軸の移動
次に「角付け」を体軸の移動で行うことです。
腰辺りを移動させる意識を持つと、板の上に体軸が整った状態で傾きやすいです。
そして、足首を曲げておくようにしましょう。
体軸の移動をしようとすると、前足の足首を曲げていくのが強くなりますが、後ろ足も基本的にはスネをタンに当てて、足首を曲げておきます。
体軸の移動方向
体軸を移動させる方向は、斜面と平行に行います。
体の正面側に体軸を移動させてしまうと「傾きが作りにくい」、「板から体が離れてしまいバランスが取りにくい」という状態になりやすいです。
ターンが始まったらすぐに重心を後ろにする
ターンが始まったら、すぐに重心を後ろにしていくことをおすすめします。
理由は、ターンをしている時間にあります。
皆さんは、ターンをしている時間は長いと感じますでしょうか。
「ロングターンをしている」「緩斜面を滑っている」ときは、ターン中に考え事をする時間はあるかもしれません。
しかし、ミドルターンや滑走スピードが早くなるなどすると、ターン中に考え事する余裕はほとんどないかと思います。
よほど動ける人でない限り、適材適所でポジションを変化させることはできないでしょう。
そのため、早め早めの行動が重要であり、早く動く意識で動いた方が結果的にタイミングが合ってきます。
ターンが始まったら、すぐに重心を後ろに移動する意識をしましょう。
恐らくこのくらい意識で、ちょうどターンのピーク前あたりで後ろ足重心の姿勢が作れるかと思います。
リーンアウトで雪面に近づける意識はアングルと柔軟性に合わせる
リーンアウトを取りつつ角付けを強めることを考えるのであれば、雪面に近づける部位は「後ろ足側の腰」か「後ろ足のひざ」です。
この決め方は、「バインディングのアングル」と「柔軟性」で決めるのがいいでしょう。
柔軟性があり、後ろ足の膝を内側に捻ることができるのであれば、「後ろ足の腰」を雪面に近づける動きがいいでしょう。
一方で、ひざを内側に捻ると痛いのであれば、無理をせずに「後ろ足のひざ」を雪面に近づけましょう。
方向は、「0度」からプラスに振っているのであれば、アングルに合わせた方向が良いかと思います。
マイナス側に角度をつけている場合は、板に対して垂直方向にひざを雪面方向に落としていくと良いかと思います。
ローテーションのタイミング
ローテーションをするタイミングは、ターンピークを過ぎたあたりです。
ターンピークは一番力が強まります。
そのため、ローテーションをせずにしっかりと板の上に乗っておきます。
そして、ターンピークを過ぎたあたりで、ローテーションを使って起き上がります。
ローテーションは縦軸
ローテーションは縦軸で行うことをおすすめします。
一般的なローテーションは横方向に体を動かすイメージをされる方が多いでしょう。
しかし、腰の位置が悪くなり、最後に内倒してしまうことがあります。
これを回避するためにローテーションを縦軸にすることを考えていきます。
縦軸にすることで、体が起き上がる方向に動くため、リーンアウトの意味合いでも動くことができます。
内倒を簡単に直す!部分的トレーニング法
内倒ぎみの方には、ぜひ試してもらいたい内倒の直し方があります。
それは、「目線と肩を斜面と平行にする方法」と「手を上げて腰を押さえる方法」です。
目線と肩を斜面と平行にする方法
上記のGIFでは少々わかりにくいですが、斜面と平行にするため、目線と肩のラインの角度が変わっていきます。
特にターン後半に差しかかるところからは、斜面に合わせるため、特に後ろの肩を上げることになります。
この意識自体は、とてもしやすいことですので、内倒を直したい方にぜひトライしてみてほしいですね。
手を上げて腰を押さえる方法
イメージでは、「支点・力点・作用点」を使った方法です。
テコの原理と言えばわかりやすいでしょうか。
三種類のテコの原理があるとされています。
この内、第二種のテコを使ったイメージが下記のGIFです。
実際に作用する力は違うのかもしれませんが、イメージでは上記のGIFのようになります。
腕を上げることが「力点」、
上体が起き上がるのが「作用点」
という原理が働いているイメージです。
このように
「前の手で腰を押さえて、後ろの手を上げる」→「上半身が起き上がる」
というようにすると、内倒を直すことができるかもしれませんよ。
手を上げたまま腰を押す方法
先程の「手を上げて腰を押さえる方法」に近い方法ですが、ちょっとした意識の違いで効果の変わる方法もあります。
上記で説明したテコの原理の第一種を使った方法です。
※押しているのは、腰ではなく正確には「骨盤」です。
骨盤を雪面側に押し込むことを「力点」、
それにより起き上がる上半身を「作用点」
とするイメージです。
基本的に上半身をまずは起こしておく意識をする必要がありますが、それができれば、より内倒を防ぐことができるかと思います。
そして、こちらの効果は、上半身を起こすことだけではありません。
角付け量(板の立つ角度)も増やせます。
板は雪面に食いついていくため「支点」となり、
板が立ち上がっていく「作用点」が生まれる
と考えています。
腰部は上半身と下半身どちらにも作用しやすい部位だと言えます。
そのため、この腰部を上手く使うことで、内倒を防ぎつつも下肢にも影響を与えることができると考えています。
最初に内倒しないように上半身をある程度起こす意識が必要なことでもあるため、「ターンに入った後に、内倒してしまう方」におすすめの方法です。
まとめ
今回は、トゥサイドターンで内倒しないための方法をお伝えしました。
内倒するクセがある方は、もしかしたら意識に問題があるかもしれません。
一度どのように意識して滑っているのかを、確認してみることをおすすめします。
低くなる意識が強すぎる場合は、まずは板にしっかりと乗ることを練習して、その上で雪面に近くなるように練習してみると、カッコイイ滑りになるかと思います。
また、今回の方法でトゥサイドターンを行うと、最初はロングターンぎみになるかと思います。
しかし、そのターンの大きさが結果的に外力を活かした滑りになります。
まずは、外力を使ってターン中の遠心力を感じてみてください。
もし慣れてきたら、動くタイミングを少しづつ早めていきましょう。
ターンの精度がより高くなっていきますよ。
まずは、しっかりと板の上に乗るように練習してみることをおすすめします。
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