ベーシックカーブの立ち上がり抜重!新定義は「加重」で足場を作る?

ベーシックカーブの立ち上がり抜重に対する疑問 カービング

今回は、ベーシックカーブの立ち上がり抜重に焦点を当てていきます。

実は、昨シーズンのJSBAのインストラクターの講習会でもある、年次講習にてベーシックの運動に関して新定義が出ました。

正確には新定義というよりも、再認識のような印象です。

今後、また定義が変わる可能性もありますが、私は新しい定義の方がベーシックカーブのイメージが合いますので、新定義を元に立ち上がり抜重についての考えをお伝えしていきます。

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ベーシックカーブの立ち上がり抜重の考えは一つではなかった

「ベーシックカーブの立ち上がり抜重をどのようにしていますか?」

このようにベーシックカーブについて聞かれたときに、どのようなところに注目しますでしょうか。

例えば、

「山側に立ち上がって切り替える」
「板をフラットにするように立ち上がる」
「切り替えのときに谷側に立ち上がる」

立ち上がり抜重の方向

上記の図は少々極端ですが、このような考えをするのではないでしょうか。

この他にも違う考えをする方もいるかもしれませんね。

以前までの定義ですと、ここのところが不透明なところでもあり、やり方、考え方が人それぞれだったとも言えます。

ただ、2018-2019年シーズンの年次講習会で、新定義として出たベーシックは、

「山側に立ち上がって切り替える」

です。

このように聞いて、イメージしていたことと違う方もいるのではないでしょうか。

恐らく驚いている方もいるのではないか、と思います。

ベーシックカーブの立ち上がり抜重は山側に立つ?

先程、新定義として話が出ているのが「山側に立ち上がって切り替える」という話をしましたが、なぜ再認識としてこの定義が出たのかを私なりに考えた結果をお伝えします。

まず、このベーシックカーブ。

いや、運動だけを考えていくために、「ベーシックターン」とカービングではないターンで考えていきます。

このベーシックターン、どのレベルが行うターンでしょうか。

レベルとしては、初級者から中級者が該当に挙がることでしょう。

スライド系のターンをするとしても、基本的にはこのベーシックの運動要素を使います。

それでは、このベーシックの運動でもある「立ち上がり抜重」と「沈み込み荷重」が、どのように初級者のターンに活用されているのかを考えてみます。

「立ち上がり抜重」、いわゆる「立ち上がって切り替える」ことがなぜ初心者がやりやすい行為なのかと言いますと、「高い姿勢の方が切り替えがしやすい」ことにあると私は考えています。

正確ではないかもしれませんが、

「立ち上がることで姿勢が高くなり、重力や遠心力などの外力を利用して次のターン内側に引っ張られやすくなる」

という考えです。

また、「単純に動きやすい」という理由もあると言えるのではないでしょうか。

このように立ち上がることで、「外力を利用しやすい」「動きやすい」から「切り替えがしやすい」という考えもできるかと思います。

立ち上がりでの切り替えを使う理由に関しては、このようなことが思い当たります。

それでは、「どのようにして、立ち上がるのか」を考えてみましょう。

私は、立ち上がる際には、「足場を作る必要がある」と考えています。

例えとして、2つ動きを図としてみます。

▼山側に立ち上がる

足場を作る

▼フラット方向に立ち上がる

フラットに立ち上がる

「山側に立ち上がる」方に関しては、雪面に食いついている板を押すわけですので、雪面が盛られるようになり、足場ができやすいと考えています。

一方で、「フラット方向に立ち上がる」方に関しては、無重力で動いているわけではないため、意図的ではないにしても板を寝かせるために、エッジを雪面に食い込ませるよう地面に押しつけて足場を作っていると考えられます。

どちらにしても、「足場を作っている」と私は考えています。

そして、斜面で滑走している特別な状況下であるからこそ、「高い姿勢の方が切り替えがしやすい」という理由も相まって「山側に立ち上がる」というのを理論として打ち出したのではないか、と私は考えています。

ただ、「谷側に立ち上がる」「フラットにする」というのも、考え方としては間違えていない可能性もあるとも言えます。

実際に、新定義に異議を唱える方もいると聞いています。

ここに関しては、人によって感覚が違うこともあるため、違う結果が出てしまうことは当然とも言えますね。

ヒールサイドとトゥサイドで関節の動きが異なるので、ここでも動き方のイメージは違うのかもしれません。

また、技術力によっては、「板を走らせる」「反発で切り替える」ということができ、結果的に「谷側に立ち上がる」「フラットにする」という切り替えの動きの感覚が味わえる可能性もあります。

しかし、私としては、どの切り替えの動きにしても、「一旦は山側に立つ動きを、無意識にでも微量に行っている」と考えています。

これにより、「足場を作って、切り替えている」と言えるのではないでしょうか。

足場を作らないという考えは厳密には違いますが、無重力の状態に近いところで切り返しの動きができる、ということになってしまうと考えています。

そして、JSBAの定義に沿って考えますと、「山側に立ち上がって、切り替える」とした方が印象が良いかもしれません。

※あくまで私の解釈です。

ちなみに「沈み込み荷重」をレベルの観点で考えますと、「脚部を曲げることで小さくなり、バランスが取りやすくなる」ことを基準として考えていると言えます。

沈み込み荷重に関してもっと詳しく知りたい方は、以前の下記の記事をご覧ください。

なお、以前までは「雪面へ近づくことでも」沈み込み荷重としていましたが、数年前から「脚部のストローク」が重要視されるようになっていますので、バッチテストや検定を受けられる方は、この点もお気をつけください。

ベーシックカーブの立ち上がり抜重では「加重」が行われる

ベーシックの立ち上がり抜重で、ややこしいのが「抜重」の表現です。

山側に立ち上がるということは、実は「加重」していると言えるのです。

これでは、矛盾していることになりますよね。

今後、この表現は変わるかもしれないという話もあります。

ただ、現状のこの表現で考えるとしましたら、「足場を使って(加重して)、切り替わるときに抜重する」という考えが近いのではないかと考えています。

と言いますのも、クロスオーバー(重心が板の上を通って切り替わる)をするときに、板にかかっている負荷が一瞬でも抜けるからです。

「人が荷重、抜重する」のではなく「板が荷重され、抜重される」という「板ベース」に考えると、この考えや表現もしっくりとくるのではないでしょうか。

ベーシックカーブの立ち上がり抜重は脚のストローク

よくベーシックカーブの立ち上がり抜重と言いますと、「体全体で立ち上がる」ことをイメージされがちです。

しかし、ベーシックカーブの運動要素として考えますと、「ストローク」による運動となります。

要は、「ストローク」ですので、「脚部の屈伸」が重要になります。

初心者に教えるときに、わかりやすい「デモンストレーション」として、見せるときは体全体での立ち上がり運動も使うのかもしれませんね。

しかし、先程もお伝えしたとおり、荷重と抜重を「板ベース」で考えてみていただきたいです。

上体が立ち上がる動作をした際に、どのように板に作用するでしょうか。

動作を「山側に伸び上がる」動きとします。

遠心力が強い状態であれば、バランスを取ることができるかもしれませんね。

しかし、ターンピークを過ぎた後は、遠心力が弱くなってきます。

その状態で、上体も山側に伸びてしまうと、バランスを崩してしまうかと思われます。

そのため、上体まで山側に伸び上がるのではなく、あくまで脚部のストロークと考えると良いでしょう。

脚部のストローク(押す方向)を使って足場を作りにいき、上体はターン中にバランスの取れる姿勢のままにします。

脚部のストローク

これにより、足場ができて、外力も相まって立ち上がることができます。

また、ストロークによって加重が上手くできれば、板の進行方向が自身側にくるため、無理にフラットに立ち上がろうとしなくても切り替わりやすい、とも言えます。

このように、あくまで脚部のストロークを使って、足場を作ることがポイントです。

切り替わるときは予測の動きをする

先程は、足場を作るとお伝えしました。

このときに、上体は次のターンのノーズ側に重心を移動させると、次のターンへつながりやすいでしょう。

上手く足場を作ることができれば、板は引き込まれるように動いてくれます。

原理としては、押すようにストロークすることで、「加重」だけではなく、「角付け」も強くなります。

この状態を「エッジング」とも言えますが、板のR(半径)が急激に小さくなるため、曲がってきます。

要は、山側に向かって曲がってくるという感覚です。

それに合わせて、次のターンに遅れないように、上体(正確には腰部)の意識は前重心になるように動いていきます。

これにより、ターンを繋げやすくなります。

まとめ

立ち上がり抜重という表現なのに、「加重をする」というのは驚きだったのではないでしょうか。

また、立ち上がるという表現なため、上体も伸び上がるような印象を受けますが、あくまで「脚部のストローク」が重要です。

初級者や中級者が脚部のストロークができるのか、という点に関しては、正直難しい技術だと思います。

しかし、「高い姿勢になるから切り替えやすい」(立ち上がり抜重)、「小さい姿勢でターンをするからバランスが取りやすい」(沈み込み荷重)という点で考えれば、運動要素としては納得できる部分でもあると言えるでしょう。

また、立ち上がり抜重は、板ベースで考えるとある程度しっくりきやすいかと思います。

「加重」をして足場を作って立ち上がった際に、「板にかかっている負荷が一時的に抜ける」という考えですね。

なお、「切り替えのときに谷側に立ち上がる」と「板をフラットにするように立ち上がる」と言われたからと言って、一概に間違いではないない可能性があります。

と言いますのも、インストラクターは人の足りないところを補うためにあえてこのような表現をすることがあるからです。

例えば、「いつまでも山側に体が残って、切り替えられない人」には、「切り替えのときに谷側に立ち上がる」というように言うこともあるかもしれません。

「上体だけ先にターン内側に入ってしまう人」には、「板をフラットにするように立ち上がる」というように言うかもしれませんね。

このようにその人に合わせたアドバイスということもあるので、「谷側に立ち上がる」「板をフラットにする」と言われたから信じられない、とは言い切れないでしょう。

なお、立ち上がりの理論はそれぞれ考え方があるかと思います。

今回は私がJSBAの新定義について考えた結果です。

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