ベーシックカーブの運動の定義でもある「沈み込み荷重」。
この沈み込み荷重は、以前の記事で「外力で板をたわませる」ことがポイントになるとお伝えしました。
しかし、やみくもにストローク(脚部の曲げ)をすれば良いと言うことではありません。
と言いますのも、多くの場合、ストロークをすると「板が寝てしまう」ことが多いのではないでしょうか。
これでは、「効果的に外力で板をたわませる」こと以前に「バランスを崩しやすくしてしまう」でしょう。
そこで、沈み込み荷重をするための体の動かし方に焦点を当てていきます。
ベーシックカーブの沈み込み荷重をすると板が寝る?
ベーシックカーブの沈み込み荷重の考えで、「ストロークをすると板が寝る」と思っている方はいませんか。
▼ストロークで板が寝るGIF
実際に、私もバッジテストを受けているときは、そのように思っていました。
要は、「運動を見せればいい」というような考えですね。
バッジテストは滑走技術がある程度高ければ、ごまかすことはできるかもしれません。
しかし、インストラクター検定に合格するのは難しいでしょう。
このストロークをすることで板が寝る理由は、上記のGIFにある通り、「ただ板に近づく」ことをしているからです。
それでは、どのようにして板を寝ないようにするのでしょうか。
次からは、「ストロークをしても板が寝ないようにする方法」をお伝えします。
ベーシックカーブの沈み込み荷重をするために!板が立つ方向に体を動かすことを知る
先程、ベーシックカーブの沈み込み荷重をする際に、「ストロークをしても板が寝ないようにする方法」があるとお伝えしました。
その方法とは、「板を立たせる」ことも同時に行うという方法です。
寝てしまうのであれば、板を立たせる技術も組み合わせて「相殺しよう」という考えです。
組み合わせる前に、まずは板を立たせる体の使い方を考えていきます。
※ここでの板を立たせる技術は、「角付け」の方法とは違い、「体の動かす方向」の話です。
「角付け」の話は、別の記事に書いていますので、そちらを読んでみてください。
板を立たせる体の使い方に関しては、「体の傾きを作って、その状態から板を立たせる方向に体を動かす」ことをします。
その方向とは、「雪面側方向」です。
そして、雪面に近づける体の部位は、ヒールサイドとトゥサイドで異なります。
使う部位は、ヒールサイドは「腰部」、トゥサイドは「ひざ、もしくは腰部」です。
※トゥサイドに関しては、アングルや体の使い方によっても異なるため、自身がやりやすい方法を取るのが良いかと思います。
下記のGIFは、ヒールサイドとトゥサイドで各部位を雪面側に近づける動きをしたときのイメージです。
この動きをすることで板が立つのを見てみてください。
▼ヒールサイド
▼トゥサイド(ひざ)
▼トゥサイド(腰)
上記のGIFのように雪面側に対象の部位を落とすと、板が立ちます。
これは、厳密には違うかもしれませんが、「足首」以外の雪面に近づけられる板に近い関節が板に作用すると考えています。
なぜ「足首以外」と考えているのかをお伝えします。
「足首」は常にバランスを保つため、体重が乗っており、足首の関節の可動域は一般的には小さいです。
そのため、意図的に動かせる量(板を立たせられる量)は少ないと考えています。
▼足首の可動による板の立つ量
このように、足首の可動による板の立つ量は少ないです。
そのため、「大きく角付け量を増やすこと」も、「雪面方向に動かすこと」もできないため、足首以外の関節で、角付けを強める補助をする必要があります。
足首以外の関節を動かすことがポイント、ということはわかっていただけたかと思います。
しかし、足首以外の関節の中でも、なぜ「板に近い関節」としているのか、に疑問をいただく方もいるかと思います。
この理由についてもお伝えします。
関節は、板から離れれば離れるほど、直接板に与える影響は少なくなると考えています。
一方で板に近い関節を動かせば、板への影響は大きいと言えるでしょう。
このことから、足首を除いた、板に近い関節を使うことがポイントになり、それがヒールサイドだと「腰部」、トゥサイドでは「ひざ、もしくは腰部」ということです。
※あくまでスノーボードであり、スノーボードのブーツの硬さとバインディングでの固定があることを利用した方法です。
このように各部位を上手く使うことで板を立たせることも可能になります。
ベーシックカーブの沈み込み荷重の体の動かし方①ヒールサイド
それでは、実際にベーシックカーブの沈み込み荷重の体の動かし方をお伝えしていきます。
ヒールサイドとトゥサイドで考え方が少々異なるので、分けてお伝えします。
まずは、ヒールサイドからお伝えしていきましょう。
※やり方は、様々ありますので、このやり方が全てではありません。
あくまで私が考えている方法の中の一部です。
ヒールサイドの沈み込み荷重の体の動かし方①腰部の落とし込む方向
先程の章でお伝えした、体の関節を雪面に落とし込む方向を使います。
しかし、先程のはあくまで、板を立たせるだけのことを考えた方法です。
ここでは、ストロークをすることもプラスして考えていきます。
ヒールサイドでは、二つの方法が考えられます。
一つ目は、板方向と、雪面方向の中間辺りを目がけてストロークを使って、腰部の位置を動かしていく方法です。
▼中間ライン方向
※正式な名称ではないですが、この記事ではこの方法を「中間ライン」と呼ばせていただきます。
このようにすることで、板が立つ方向にも体を落としているため、ストロークをしても、板が寝づらいです。
また、二つ目は、板を立たせる方向に一度動いてから、ストロークをしていくという動き方です。
▼曲線ライン方向
※こちらも正式名称ではないですが、「曲線ライン」とします。
板を立たせる方向に重心を移動しているため、板が雪面にグリップしてストロークをしても板が寝づらいです。
ただし、板の角付け量が少ない場合には、グリップせずに板が寝てしまうこともありますので、ご注意ください。
このように主に二つの方法が考えられます。
また、ストロークする際に注意してほしいことがあります。
傾く際に、「ストロークを少しもせずに完全に体を傾けると、ストロークがしづらい」ということがあるので注意してください。
傾くことに集中してしまうと、バランスを取るために筋力が緊張してしまうため、そこから動くことが難しいです。
▼ストロークせずに傾いたときのイメージ
上記のことを回避するためにも、傾く際の最初の初動は、「ストロークを少しでも、始めてから傾きを取る」ようにすると、傾いたあとにもストロークがやすいです。
▼傾きを作る前に少しストロークをするGIF
また、上記の「中間ライン」と「曲線ライン」の動きは、私の感覚的なものになりますが、力の働き方も違うと考えています。
中間ラインは「直接エッジ付近に力が加わりやすく」、曲線ラインは「雪面に食い込ませてから、面方向に力が加わりやすい」、のではないかと考えています。
こちらは正確ではないかもしれませんが、試してみますとそれぞれの効果の違いも体感できるのではないでしょうか。
ヒールサイドの沈み込み荷重の体の動かし方②足首を使う
先程の腰部の落とし込みも必要ですが、より早く板を雪面に噛ませることを想定したときの方法があります。
その方法とは、「角付けの際に先につま先を上げて、足首を使う」という方法です。
足元からしっかりと雪面に食い込ませることで、足場ができやすいため、傾きやストロークがしやすくなります。
この方法は、特にショートなど早いタイミングで動きたいときに効果があると考えています。
なお、バインディングのフォーワードリーン(角度)の調整で足首が固定されている場合は、この意識は必要ないかもしれません。
ヒールサイドの沈み込み荷重の体の動かし方③後ろ重心にポジショニング
ヒールサイドの場合に良くあるのが、テールのズレです。
人によっては、真ん中のポジショニングの意識でちょうど良い人もいるかと思いますので、ここでの方法はテールがズレてしまう方におすすめの方法です。
※テールがズレるということは、前足重心になっている可能性があります。
後ろ足のアングルがマイナスに向いている場合は、この方法が合っているかもしれません。
▼腰部を後ろにスライドさせたときの姿勢
腰部の位置を後ろにスライドすると後ろ足に重さが乗るので、テールがズレにくくなります。
後ろ足のアングルがプラス方向に向いている方や、柔軟性のある方が使える方法です。
▼腰の向きをノーズ方向に向けて、後ろ足を曲げてテール寄りに乗った姿勢
腰部の向きをノーズ方向に向けようとすることで、お尻の位置が板から外れずにくくなります。
そのうえで、テール方向に腰部を引くと後ろ重心にしやすいです。
このとき腰部のみというよりも、それに合わせて適度に上体(頭・肩)と後ろ足のひざもローテーションできるとノーズ方向に向きやすいです。
※腰部含めノーズ方向に向け過ぎると体に痛みが出る可能性もあります。
やり過ぎて体を痛めないようにおきをつけください。
なお、ローテーションを行うことになるため、人やセッティング次第では、ズレを生じる可能性もあります。
何度か試してみてズレが出るようでしたら、セッティングを見直すか、滑り方を変えてみると良いかと思います。
上記のパターン①とパターン②の動きについてはわかりましたでしょうか。
現在ヒールサイドでズレを感じている方は、パターン①とパターン②の動きを使って、後ろ足側にポジショニングしつつストロークすると、ズレが少なくなるかもしれません。
ベーシックカーブの沈み込み荷重の体の動かし方②トゥサイド
トゥサイドの沈み込み荷重の体の動かし方①ひざを落とし込む際の股関節の曲げに注意
トゥサイドでのストロークの特徴は、ひざを曲げて雪面に近づければ簡単に板を立てることができることです。
そのため、ヒールサイドに比べたらズレにくいとも言えます。
ただ、トゥサイドでストロークをする際に起こりがちなのが、「股関節の屈折量が多い」ケースです。
ストロークをしようと考えるあまり、お尻を板に近づける意識が強く、股関節を曲げすぎてしまいます。
▼お尻を板に近づけようとした姿勢
これでは、内倒しやすいです。
また、ヒールサイドと異なり、立てた後に股関節を屈折しすぎると、板が寝てしまいます。
▼板を立ててから股関節を屈折させてストロークしたときのGIF
もし、股関節を曲げるのであれば、ひざを雪面に落とし込むことを同時に行うことが寝づらくするためのポイントです。
それに合わせて股関節を屈折させる際には、上体を起こす意識があると良いでしょう。
また、両足のひざを雪面に落とし込む意識があると、ポジションは真ん中に乗りやすいです。
もし、トゥサイドでもっと後ろ重心にしたい場合は、後ろのひざを雪面に近づけるようにすると、後ろ重心になりやすいです。
▼ひざを雪面に落としつつ、同時にストローク
さらに、もっと後ろに乗りたいのであれば、腰部もテール側にスライドできるとより後ろに乗ることは可能です。
トゥサイドの沈み込み荷重の体の動かし方②体の向き
先程、トゥサイドでお尻が板から外れる話をしましたので、それに合わせて他にも回避できる方法をお伝えします。
なお、アングルや柔軟性次第では、難しいかもしれません。
また、この方法が合う方と合わない方もいるので、一つの方法としてお話しします。
股関節の向きをノーズ方向に向け、それに合わせて上体と後ろ足のひざも適度に回旋させます。
この姿勢であれば、ストロークしてもテール側に腰部を引くことができるため、内倒しづらいままストロークがしやすいです。
▼ノーズ方向に腰を向けた状態のまま、後ろ足を曲げてストローク
この方法では、「ひざ」よりも「腰」を雪面方向に落とすことをおすすめします。
リーンアウトも取れつつ、ストロークをしつつ後ろ重心にでき、角付け量の増加も行いやすいです。
ロングターンなどの大きめのターンをするときに有効と考えています。
トゥサイドの沈み込み荷重の体の動かし方③足首の使い方
ベーシックカーブの沈み込み荷重はストロークを使います。
その際に脚部の関節を曲げる必要がありますが、人によっては「足首が曲がらない」ことがあります。
これはブーツの硬さによる影響もありますし、足首の曲げ方がわからないという方もいることでしょう。
そこで、足首の曲げ方をお伝えします。
ブーツのタンにスネを当てて、足首を曲げようとしてみてください。
▼ブーツのタンにスネを当てて、足首を曲げる
これだけです。
意外にこの方法を知らない方がいて、空気椅子のような姿勢を取る方がいます。
足首を曲げることができれば、脚部の各関節が使えるようになりますので、股関節だけが強く曲がるというのを防ぎやすいです。
ターンに関して、足首の使い方は様々ありますが、ストロークを使うことを考えるのであれば、足首は曲げた方が良いかもしれません。
まとめ
今回は、ベーシックカーブの沈み込み荷重をする際の体の動かし方に注目しました。
ストロークをする際の体の使い方は、これが正解というわけではありません。
やり方や考え方は、思っている以上に多くあります。
今回の体の動かし方も、組み合わせられるものと、組み合わせられないものがありますので、「セッティング」や「現在の自分自身の技術」、「求めている滑り方」に合わせてチョイスするのが良いかと思います。
もし、現在ただストロークすることを考えている方がいる方は、「板を立たせつつ、ストロークができる動き」を考えてみてはいかがでしょうか。
そうすることで、「ストロークするから板が寝る」という考えから変わるかと思います。
ぜひベーシックカーブの沈み込み荷重による、ストロークのイメージを変えてみてください。
コメント
本日、指南して頂いたのがまさにこれですね!ありがとうございましたm(__)m
コメントありがとうございます!
ストロークをする際に、エッジグリップできるようにするのがカギです!
頑張ってください(^^)