今回はJSBA(日本スノーボード協会)が定義づけている3つの基本運動の内の一つ「荷重」に焦点を当てていきます。
そして、その中でもベーシックカーブの沈み込み荷重に注目していきます。
みなさんは、ベーシックカーブの沈み込み荷重で、なぜ板がたわむのか意識したことはありますでしょうか。
中には、「運動をすればいい」「しゃがむことを見せればいい」とお考えの方もいるかと思います。
他にも「脚を曲げることで、力を加えられる」と思っている方もいることでしょう。
この認識のちょっとした違いによって、滑りの意識が変わるかもしれません。
ベーシックカーブの沈み込み荷重による、「力のかかり方」を考えていきましょう。
ベーシックカーブの沈み込み荷重とは?
以前の記事で、沈み込み荷重のお話をしましたが、今回はより注目していくことになるため、おさらいの意味を込めて説明させていただきます。
JSBA(日本スノーボード協会)という協会では、いくつかのターン技術を定義付けしております。
そして、そのうちの一つに「ベーシックカーブ」という種目が存在します。
このベーシックカーブは、「カーブ」というだけあり、「カービングターン」です。
ベーシック「ターン」でしたら、「カービングターン」と決められていません。
ただ、この「ベーシック」には、「特定の運動の指定」があります。
それが「立ち上がり抜重」と「沈み込み荷重」です。
「立ち上がり抜重」は、立ち上がることで負荷を抜くことで、切り替えに繋げる動きです。
この立ち上がり抜重に関しては、また別の記事で書きます。
「沈み込み荷重」は、「脚部の曲げ」を使って「荷重」していく運動です。
この荷重、皆さんはどのようにしようとしていますでしょうか?
ベーシックカーブの沈み込み荷重ではなく、「加重」と考えている情報がある
ここでは私があくまで考えている内容をお伝えします。
人によっては考えが違うかもしれませんので、一つの意見として聞いていただけると嬉しいです。
それでは、ベーシックカーブの「沈み込み荷重」で、よくある話をします。
「しゃがみ切ると力が入る」
このようなお話を耳にする機会があります。
まず、「しゃがむから力が入る」という意見は、一概には言えないことだと考えています。
その理由は、脚部を曲げている間は、力が抜ける動作をしているとも考えられるからです。
ということは、
「荷重をするはずなのに力が抜けるの?運動として矛盾しているんしゃない?」
と思う方もいることでしょう。
この疑問を解決するためには、もう少し読み進めてみてください。
もう一方の「しゃがみ切ったときに力が入る」という話でよくあるのは、これにより荷重が行われるというケースです。
たしかにしゃがみ切ったときには、一時的に力が入ると言えるでしょう。
ただ、この考えは「沈み込み荷重」ではないと考えています。
「力を加えたい」と考えているように思われるため、どちらも意識としては「加重」と言えるのではないか、と考えています。
「加重」は力を加えることであり、自分自身の働きかけで力を加えようとする行為を指します。
「しゃがんで力を加える」「しゃがみ切ることで力が加わる」ということは、あくまで【自分自身が力を加える】ことをしているので、「加重」と考えられるのです。
ここでは、あくまで「荷重」です。
「荷重」とは、「板に力が加わる」ことを指しており、主に外力で板に力を伝えることです。
沈み込み荷重の部分だけ考えますと、
「力を加える」→「加わる」
に考えを変えてみると良いでしょう。
ベーシックカーブの沈み込み荷重による力の加わり方
先程お伝えしたとおり、沈み込み「荷重」ですので、外力を使っていくことはお伝えしましたよね。
まずは、外力というものもお伝えしておきます。
外力とは、「重力」「摩擦抵抗」「雪面抗力」「地形変化」「空気抵抗」「遠心力」などの自身以外の外側の力のことを指します。
そもそもスノーボードで滑走できるのは、「重力」があり、地面が斜面になっていて、滑りやすい雪だから滑走できます。
さらに滑走することで「摩擦抵抗」が発生し、斜面が一定ではなく、うねりなどの変化がある場合は、「地形変化」による力の変化が起き、滑走している時点で「空気抵抗」を受けると考えられます。
このようにターンという話だけではなく、ただ雪山を直滑降するだけでも外力は発生していると言えるのです。
また、ターンをする際には、「遠心力」が発生します。
そして、JSBAでは「雪面抗力」を下記のように記しています。
雪面抗力は、スノーボーダー自身の積極的な内力と重力、遠心力に対抗するための雪面からの反力で、これにより角付けをすることでボードの滑走方向が変わるのです。
引用:JSBAスノーボード教程
このようにスノーボードでターンをすると、外力が発生してくるとされているのです。
また、カービングターンを、板の性能を抜きにして考えますと、これらの外力とバランスを取る動きをするからターンができていると考えられています。
これらの外力の中でも遠心力に対してバランスを取るため、体の傾きを使ってバランスを取っているとされているのですね。
そして、外力と体のバランスを取るための内力に挟まるのが、「板」です。
ということは、「板」は様々なところから力をもらうわけですので、どんどん板はたわむ(屈曲)していくわけです。
このように「外力」をしっかりと受けて、それを板に伝えることで、「板への影響(たわみ)」に繋がるということです。
この外力でたわむ際に、しっかりと受け止める姿勢を作って板に乗っていることが「荷重」と言えるのです。
「荷」としているので、「のせること」を意味していると考えています。
※実際には力学での定義がありますので、正確には異なるかと思われますが、わかりやすく考えるならこのように考えても良いでしょう。
ということで、「沈み込み荷重」の考えとしては、
「脚部の曲げ」の運動を使ってしっかりと板に乗り、受ける外力を板に伝えてたわませること
だと考えています。
先程の話から、恐らく「脚部を曲げる」と力が伝わらない、と感じている方もいるでしょう。
矛盾しているように感じますよね。
そこで、次に私が考えている、「どのようにすると板に外力が伝わっていくのか」をお伝えしていきます。
ベーシックカーブの沈み込み荷重で板に力を伝える方法
まずは、体の運動「脚部の曲げ」について考えていきましょう。
先程お伝えしているとおり、「脚部を曲げている間」は力が抜けると考えています。
また、「脚部を曲げ切ったとき」も、一瞬だけ力がかかります。
重力方向に動いていた体を、停止させるですので、一時的に力が加わると考えています。
しかし、一時的です。
外力はターン中に発生し続けているので、一時的だと拮抗し続けられないことになりますよね。
そこで、考え方を変えてみてほしいです。
「脚を曲げて圧を加える」のではなく、「外力を受け続ける姿勢を作ってターンをしていく」という考えをします。
脚部は「曲げている間」「曲げきった一瞬」は、先程の結果になると言えますが、【曲げきった姿勢をキープ】する場合はどうでしょうか。
※外力とまとめて外からの力としました。
矢印の方向に関しては正確でない可能性があることご了承くださいませ。
ターン中に自身が力を抜く動作をしていないため、大きく力を働きかけることはできませんが、ある程度は外力を受け続けられると言えるでしょう。
そして、曲げきった姿勢をキープするということは、体が固定されるため、その状態をキープしようと外力と拮抗するための筋力を使い続けると考えられるのです。
これにより、外力を受け止められつつ、脚を曲げて体が板に近いところにあるため、雪面の凹凸に対応しやすい姿勢のまま「荷重」が行われるということです。
なお、曲げ切るというのは、必ずしも一番しゃがめるところまでとは限らないと考えています。
曲げすぎることで無駄な動きになることもあり得ますので、あくまで荷重がしっかりと行われる範囲内でしゃがみ切ることがポイントだと考えています。
そのため、人によっても「しゃがみ込む位置」は、異なると言えるでしょう。
ベーシック運動の解釈の変更
2018~2019年シーズンから協会側で考えの変更をしているようです。
2018~2019年の年次講習では、ベーシックカーブの沈み込み荷重を「加重」ではない、という形で情報を出しているとお伺いしています。
これは変更というよりも、再認識なのではないでしょうか。
また、この沈み込み荷重による効果としては、「バランス良く乗ること」としています。
初心者が取り組みやすいターンとしても考えられている「ベーシックの運動」の効果としては、私一個人としては、適切だと考えています。
沈み込む(脚部を曲げる)ことでサスペンション技術が行えると考えられますので、衝撃吸収のような効果が確かにあると思います。
また、沈み込みの後は、立ち上がることによる切り替えもしやすくしているため、ターン中にバランスを取ることが難しい初心者には合っているのかもしれません。
しかし、「荷重」をするためにはタイミングを早めることが重要と考えているため、その点では初心者は早くに沈み込むことはとても難しいと考えています。
このような観点もあるため、全員が全員、新しい意見に賛成とは言えないのも致し方ないのかもしれませんね。
今後の動向にも注目しておくべきと言えるでしょう。
まとめ
今回は沈み込み荷重の力の加わり方について焦点を当てていきました。
以前に書いたタイミングの記事に似ていますが、違う点があります。
それは、「脚部を曲げ切った状態でターンをすることが荷重になる」というお話です。
実際にターンの中にベーシックを取り入れるのであれば、早めに脚部を曲げることを考え、曲げ切った姿勢を作る時間を作りましょう。
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