サマーゲレンデのカービングターントレーニング企画の第8回を始めます。
前回は、ヒールサイドターンに注目していきました。
お尻を着けるほどのターンとなると、様々な体の使い方を組み合わせることがキーポイントとなります。
前回はヒールサイドターンでしたので、今回からは「トゥサイドターン」の内容にしましょう。
トゥサイドターンでは、問題視されやすい「内倒」に注目していきます。
今回は、トゥサイドターンで内倒する原因や、その解消するポイントをお伝えします。
サマーシーズンに限った話ではなく、冬に繋がる話ですので、しっかりと読んでみてください。
内倒とは?そもそもダメなことなの?
内倒とはどのような状態を指す?
トゥサイドのカービングターンでは、「内倒してますね!」などと言われる方も多くいるかと思います。
この内倒、どのような状態なのかご存じでしょうか。
まずは、内倒という状態をおさらいしましょう。
内倒とは、ターンをしているときに、板の垂直上の架空の線より内側に体が入ってしまうことです。
多くの場合、「上半身」や「頭」が板の内側に入ってしまう場合に内倒と判断されやすいです。
そもそも内倒がなぜダメなの?
内倒があまり良くないとされているのはなぜなのでしょうか。
当たり前のように「良くない」とされているため、疑問に感じない方もいるかと思います。
内倒が良くないとされているのは、
「板に力が伝わりづらい」
ということが主な理由と言えるでしょう。
一つずつ説明していきます。
なぜ「バランスを崩しやすい」のかと言いますと、「頭」は体の中でもとても重たい部位だからです。
ターンの内側に重たいものがあることで、バランスを崩しやすくなってしまいます。
また、スノーボードの上でバランスを取るためには、板にしっかりと乗ることが重要になります。
そもそも、カービングターンをしているときは、接地している面積(支持基底面)がとても狭くなります。
接地面積が狭いということは、それだけバランスを取るのがシビアということです。
正確には違いますが、イメージとしては「綱渡り」です。
バランスを保つのはとても難しいですよね。
そして、頭が傾くとすぐにバランスを崩してしまいます。
この綱渡りをターンに置き換えて考えると、カービングターン中はバランスを崩しやすいということが想像できるかと思います。
また、もう一方の理由の「板に力が伝わりづらい」ということも説明していきます。
そもそもカービングターンで板に力を伝えることに関しても、「板にしっかりと乗る」ことが重要になります。
「乗る」というのは、【適切なポジション】を取るということです。
外力に対して、バランスの取れるポジションで居らることができれば、外力を板に伝えることができます。
しかし、先程もお伝えしたとおり、内倒はバランスを崩しやすい姿勢です。
ということは、しっかりと乗ることができていないことになりますので、力が伝わりにくい姿勢になっているのです。
あくまで「力が伝わりにくい」ということですので、全く力が伝わらないわけではありません。
しかし、本来、しっかりと乗ることができているのであれば、今まで逃がしていた力を板に伝えることができていたというわけです。
ちょっとした変化で板がたわみやすくなるのであれば、ぜひ解消したい状態と言えるでしょう。
トゥサイドターンで内倒する原因
トゥサイドターンで内倒する原因を確認しておきましょう。
よくトゥサイドターンでは、内倒しているという話を聞きますが、ヒールサイドターンでは「内倒している」という話を聞いたことがありますでしょうか。
フリースタイルの場合は、ヒールサイドターンで内倒しているという話は、あまり聞かないかと思います。
それでは、この違いはなんでしょうか。
これは、「脚部の関節」に理由があります。
スノーボード自体、横向きで乗るスポーツです。
そのため、ヒールサイドとトゥサイドで関節の使い方が異なるというのは分かるかと思います。
例えば、ひざは後ろに曲がりますが、前には曲がりませんよね。
そして、股関節も前には曲がりますが、後ろには曲がりません。
このように関節の曲がり方には特徴があり、横向きのスポーツとしては、この関節の使い方の違いはどうしても出てしまいます。
そして、ヒールサイドターンでは、股関節が前に曲がるため、上半身が板の内側に傾くことがほとんどなく、体軸が内側に入りすぎることは珍しいことなのです。
※アルペンの場合は、アングルが前にセッティングされており、ハードブーツのため、「頭や前の肩が下がる」などでヒールサイドでも内倒することがあります。
逆にトゥサイドターンでは、股関節が前に曲がってしまいます。
さらに上半身と太ももの長さを比べても、当然上半身の方が長いため、同じ量曲げたとしても内倒してしまいます。
特に、トゥサイドターンは、体の向きをつま先側に向けることが容易いので、上記の画像のような形になってしまいやすいのです。
このように「脚部の関節」が内倒するもっとも多い原因と言えるでしょう。
ただし、関節が曲がるから「必ず内倒するのか」と言うと、そういうわけではありません。
実際に内倒せずにターンをしている方も多くいます。
また、関節の他にも、内倒する原因があります。
その原因とは、
「手を雪面に着けにいこうとする」
です。
感覚としては、低くなっているように感じるかもしれませんが、実際には上記の画像のような形に近くなってしまうことがあるのです。
このような意識を持っている方は、意識を変えていきたいですね。
それでは、次では解消するための方法をお伝えしていきます。
トゥサイドターンの内倒を解消する方法
内倒を解消する方法はいくつかありますが、今回は私が思う効果的な方法をお伝えしていきます。
ターンのサイズは、ミドルやロングなどの幅のあるターンです。
ショートターンでは、この方法は使えるものと使えないのものがあると考えています。
腰と上半身の向き
まずは、「腰と上半身の向き」です。
上記の画像のように、腰と上半身をノーズ方向に向けてみてください。
ただ、バインディングのアングルのセッティング次第では、少々窮屈かもしれません。
もし、本当に解消したいと考えている方は、バインディングのアングルのセッティングをプラス方向に向けてみることをおすすめします。
後ろ足のアングルを0度以下にしていた方におすすめのセッティングは、「前24・後ろ9」です。
今までダックスタンスだった方は、このアングルは滑りづらく感じるかと思いますが、腰と上半身はノーズ方向に向けやすいので、ぜひ慣れるまで試してみてほしいです。
それでは、なぜ腰と上半身の向きで内倒が解消されるのか、という理由をお伝えします。
内倒しない理由は、「お尻の向きがテール方向に向く」からです。
▼お尻をテール側に向いているときのしゃがみ方
▼横向きのときの内倒しづらいしゃがみ方
※股関節が上記のGIFより曲がると内倒になりやすい
上記のGIFを見比べてみますと、内倒しづらいと感じるのは、「お尻をテール側に向いているときのしゃがみ方」でしょう。
要は、股関節を屈曲させたときに、トゥエッジ側に頭が出るのではなく、ノーズ側に頭が出ます。
そして、お尻がテール方向に近づきやすくなります。
このように頭も含めた体が板の面積内に収まりやすいので、内倒しづらいと言えるのです。
さらに、板の接地面積に重心が残りやすく、後ろ重心になりやすくなります。
トゥサイドターンをして、前に吹っ飛んでしまう方にも効果的です。
ローテーションを遅らせる
トゥサイドの特徴には、「早くローテーションしてしまう」というものがあります。
なお、ここでは「早く」ですので、タイミングの話です。
「速く」ではありませんよ。
あくまで、「タイミングを早くしやすい」ということです。
早めにローテーションしてしまうと、上記のGIFのように腰の向きと位置が変わってしまうことがあります。
それに合わせて、上半身も横向きになりやすく、結果、頭が内側に入ってしまうことがあるのです。
これを解消するためにも、「ローテーションを遅らせる」という方法があります。
ローテーションをあえて遅らせることで、ターンピークを越えるまで腰の位置が悪くなることなく、しっかりと板に乗ることができるようになります。
ローテーションを縦に行う
先程は、ローテーションのタイミングを遅らせるとお伝えしましたが、ローテーションをしないわけではありません。
ローテーションは、トゥサイドターンの後半からヒールサイドターンに切り替える前に行います。
そして、このときのローテーションのやり方を「横」ではなく、「縦」の意識にしてみてください。
前腕の脇を締めていき、後ろ腕を上げていく動きです。
縦にすることで、腰の向きが悪くなることなく、上体を起こすリーンアウトにも繋がります。
ローテーションのやり方を変えてみるのも効果的ですよ。
ローテーションはし過ぎないようにする
トゥサイドでは、ローテーションがしやすいとお伝えしましたね。
基本姿勢から考えますと、ローテーション過多になると可能性があるというのがわかります。
上記のGIFは、基本姿勢(上半身と腰の向きをノーズに向けている状態)をベースに、腰と手の位置を結ぶ線を記載したものです。
ローテーションの量を確認してみてください。
「ヒールサイドのローテーションの角度」と、「トゥサイドの太ももの前までのローテーションの角度」を見ますと、ある程度同じぐらいになっていることがわかるかと思います。
しかし、「トゥサイドのローテーション」で太ももの前を通過してしまうと、ローテーション過多になってしまうことが考えられるのです。
要は、ターン中にローテーションする場合は、「前の腕が前足の前を通過しないようにする」ということです。
ローテーションし過ぎる方は、このことを意識してみると、バランス良く乗れるようになるかもしれません。
ただし、ショートターンの場合は別ですので、お気を付けください。
また、トゥサイドからヒールサイドへの切り替えの際に意図的にする場合には、効果的かもしれませんので、あくまでターン中にローテーションをした場合の話です。
リーンアウト
他に内倒を解消する方法と言えば、リーンアウトがあります。
リーンアウトは、内側に傾いた体を起こすことです。
体を起こすということは、内倒を解消できるということですね。
なお、リーンアウトは、体の一部分でもできます。
今回の内倒の解消法として多く挙がるのが、「肩」のリーンアウトです。
後ろの腕を上げることで、体のバランスを取る、というものです。
しかし、ここで注意してほしいのは、「リーンアウトを取りすぎる前に、リーンの意識は必要」ということです。
リーンアウトをターンの入りから行ってしまうと、リーンが取りづらくなってしまいます。
リーンアウトを取ったまま傾けるほどの上級者であれば、最初からリーンアウトを取るのも良いかと思いますが、そうではない方はリーンを取った上でリーンアウトする必要があるということを頭に入れておくと良いでしょう。
また、肩の他には「頭」でリーンアウトを取る方法もあります。
頭でのリーンアウトでは、体はリーンを取ることができることがメリットです。
それではどのようにリーンアウトを取るのか、と言いますと、「前の肩に顔をくっつけにいく」という方法です。
もしくは、「意図的に頭を起こす」という方法です。
目線を遅らせる
目線を気にしてターンをしたことはありますでしょうか。
私はかなり気にします。
目線を気にすることによって、ターンの質に変化が生じるからです。
今回はその目線の使い方の一つをご紹介します。
私自身は「板を遠くに進行させる練習」をしたいときに使っています。
ただ、実際のターンのときには、通常の目線の使い方に戻しています。
あくまで一つの練習法として使っている方法です。
それでは、本題に入ります。
ここでの目線の使い方は、
「ターンが始まったあとも、ターンを後追いするように目線を向く」
というものです。
トゥサイドターンに入るときに横を向いておくことで、上体が無理に傾こうとせずに、外力を受けつつターンをすることがしやすいです。
そして、ターンが始まったあとに後追いするように目線を送ることで、先ほどお伝えしたローテーションを遅らせることがやりやすくなります。
このような効果が体感しやすいでしょう。
また、目線を先に送ってしまうと、やる気が体に伝わり、無理矢理体を動かしてしまいがちですので、それを抑制する意味でも目線を遅らせることは効果的です。
なお、この方法は、ターン前半で板が横に行きやすく、視野の確保が通常と異なるため、滑走する前には周りに人がいないことを確認して滑るようお願いします。
まとめ
トゥサイドターンで内倒しやすい方は、ぜひ今回お伝えした方法を取り入れてみてください。
私自身、内倒には苦しめられました時期があります。
その経験があるからこそ、様々な解消法を理解しているつもりです。
私が今でも気にしていることでもありますので、ぜひトライしてみてほしいことですね。
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