筆者は、SP-UNITED(エスピーユナイテッド)のバインディングを約9年間愛用してました。
出会いは10年前の試乗会で、初めて使ったときの衝撃は忘れられません。
バインディングはどれも一緒かと思っていましたが、フィット感が他のメーカーのそれとは全然違います。
そして、10年前はまだそこまで有名ではないメーカーで、周りはほぼ知らないと言った感じでした。
でも、今ではカービング業界での人気も高く、フリーランでの使用でも評価が高いです。
そんな人気を集めているSP-UNITEDのバインディングを紹介します。
※2022-23モデルを参考に紹介します。
BROTHERFOOT(ブラザーフット)は、2022-23モデルでは廃盤になっているようです。
SP-UNITEDバインディングはリアエントリー式
SP-UNITEDのバインディングを語る上で、まず最初にお伝えしておかなければいけないことがあります。
それは、通常のストラップバインディングとは装着方法が異なるということです。
SP-UNITEDバインディングは、リアエントリー式です。
リアエントリーとは、ハイバックを後ろに倒して、後ろからブーツを装着する形式のバインディングのことです。
画像引用:USP JAPAN WEB SITE
素早く装着できるのが特徴です。
そして、SP-UNITEDはアンクルストラップのバックルを可動させることで脱着を楽にし、装着時には強いホールドができるFASTECシステムという独自の機構を作りました。
画像引用:USP JAPAN WEB SITE
また、数年前からSP-UNITEDはリアエントリーとストラップ式を融合したマルチエントリーという機構も開発しました。
マルチエントリーは、リアエントリーとストラップ式のどちらも可能です。
なお、スタンダードタイプ(リアエントリーのみ)とマルチエントリータイプの2タイプを発売していました。
しかし、2022-23モデルのカタログでは、アルミベースの上位モデルにスタンダードタイプは掲載されていません。
マルチエントリーをメインに変えていくようです。
記事作成時期に調べてみると、SLAB ONE(エスラブ ワン)というモデルのみ、まだスタンダードタイプも早期予約してる店舗があるみたいでした。
また、SP-UNITEDを使う上で知っておかなければいけない重要なことがあります。
それは、セッティングができないと本領を発揮できないということです。
バインディングをバラして組み立てるぐらいしないといけないのが難点とも言えます。
しかし、セッティングさえできれば最強のフィット感が得られるのがSP-UNITEDの最大の強みでもありますね。
SP-UNITEDバインディングの基本性能
ベースプレート
SP-UNITEDのベースプレートは、アルミ素材のSLABベースと樹脂素材のFT4ベースの2タイプがあります。
SLABベースは、アルミ素材で薄く出来ていることが特徴的です。
薄くすることで軽量化を図り、足裏の感覚がダイレクトになるため、板へしっかりと力を伝えることができます。
そして、アルミ素材のため、薄くとも強度はしっかりとしています。
また、アルミだけではなく、クッションも使われており、各モデルに合わせてEVAパッドの形状を変えて装備されています。
その他、カントも搭載されているため、ポジションが最適化されやすいです。
・SLAB ONE
・MOUNTAIN(マウンテン)
・CORE(コア)
画像引用:USP JAPAN WEB SITE
FT4ベースには、ポリカーボネイト素材を配合した樹脂のため、軽量で耐久性もあるベースプレートになっています。
柔軟性が適度にあり、反応も早過ぎないことで初中級者までのスノーボーダーとの相性が良いです。
・PRIVATE(プライベート)
・FT360
ディスク
ディスクもアルミと樹脂の2タイプがあります。
アルミディスクは重量がありますが、板へダイレクトに力を加えることができます。
ハンマーヘッドボードやハードフレックスの板との相性が良いです。
また、ビスホールが縦に長いためセッティング時に細かな微調整ができます。
・SLAB ONE
・MOUNTAIN
樹脂ディスクは、アルミディスクと比べると反応がやや劣りますが、樹脂ディスクでも硬さはしっかりとしています。
ビスホールは、穴が空いているだけなので、3段階しか調整ができません。
・CORE
・PRIVATE
・FT360
ハイバック
ハイバックの構造
リアエントリー式は、ハイバックの構造が特殊です。
と言いますのも、ヒールカップとハイバックが一体になっています。
そのため、メーカーでは「ヒールカップが無い」と表現されています。
ヒールカップが無いので、どのバインディングよりもコンパクトにでき、ドラグしにくくできます。
※ドラグとは、板からブーツやバインディングがはみ出て雪面に当たること
ここは最高のアドバンテージと言えるでしょう。
そして、この動くハイバックを固定するためにワイヤーを使っています。
このワイヤーにより、ベースプレート、ハイバック、ブーツの一体感を感じられるようになっています。
ハイバックの種類
ハイバックは大きく2つのタイプに分かれます。
ハイバックの根元にアルミのヒールカップを装着したモデルになっています。
ハイバックは、全方向に適度な張りのある剛性。
そのハイバックにアルミのヒールカップを装備することで、ハイバック根元の左右への遊びを無くして、ヒールサイド全方向へレスポンスアップを図っています。
また、ヒールカップ部の位置が他のモデルよりも高く設計されていることでレスポンスアップし、脱着もしやすくなっています。
・SLAB ONE
・MOUNTAIN
画像引用:USP JAPAN WEB SITE
2019-20モデルからの新設計ハイバックで、従来よりも全方向に強度が増し、剛性感がありつつも左右に動きも出せるバランスの良いハイバックになっています。
カービングでしっかりと力を伝えられ、パークなどでも対応できる強度で、適度に動きやすさもある設計がされています。
オールラウンドに使いやすいハイバックです。
・CORE
・PRIVATE
・FT360
ストラップ
ストラップの構造
SP-UNITEDは、アンクルストラップの構造がとても良くできています。
脱ぐときには、ハイバックを後ろに倒すことで連動してストラップ根元のバックルが自動で開放します。
そのため、ブーツの出し入れがしやすいです。
反対に、装着時には2アクションになりますが、バックルを締めることで強いホールドを得られます。
これにより、従来のリアエントリーの弱点でもあったホールドの弱さを克服できました。
なお、スタンダードタイプのトゥストラップにはラチェットが付いていません。
バックルで固定しておきます。
マルチエントリーモデルに関しては、ストラップ式での脱着も可能なので、アンクルとトゥストラップの外側にラチェットが設けられています。
アンクルストラップの種類
MOUNTAIN ストラップは、足首を幅広く覆ってくれるため反応が早く、パワフルにライディングしたい方におすすめです。
なお、ガチガチに硬いわけではなく、適度な硬さなので動きづらさは感じにくいです。
・MOUNTAIN
ULTRALIGHT 3D ストラップは、左右非対称のため、内側には動きやすく、外側には強い設計になっています。
その上、真ん中にスリットが入っているため、足首にしっかりとフィットしつつ、前後にも動きやすいです。
足首を曲げる動作を妨げず、でもしっかりと反応してくれるため、テクニカル系のカービングとの相性が良いでしょう。
・SLAB ONE
2022-23モデルから出たストラップで、筆者はまだ触ったことがありません。
ただ、調べたところ樹脂っぽい素材らしく硬めとのことです。
トゥサイド方向へのレスポンスアップが期待できますね。
・CORE
・PRIVATE
・FT360
トゥストラップの種類
フィットしやすいように適度に柔軟性のある素材を使用しています。
レスポンスを確保しながらも軽量に作られており、バランスの良いストラップです。
・MOUNTAIN
・SLAB ONE
硬めの素材により強度を確保しつつも軽量に作られたトゥストラップ。
ULTRALIGHTストラップとLIGHTストラップは大きな違いは無さそうです。
・CORE
・PRIVATE
・FT360
SP-UNITEDバインディングの利点
コンパクトでドラグしにくい
しっかりとセッティングさえできれば、とにかくコンパクトになります。
その理由は、ハイバックとヒールカップが一体になっているところにあります。
一体化させることで、通常のストラップ式では固定されているヒールカップの存在分、コンパクトにできます。
そもそもSP-UNITEDのバインディングの場合は、一番出っ張るところがヒールカップではなくて、カカトです。
また、FASTECの構造でハイバックが後ろからブーツを押してくれることや、ヒールカップが高いことで更にコンパクトになります。
コンパクトになることでドラグしにくくなるので、足が大きい人にはかなり大きなメリットになると言えるでしょう。
カービング好きな方々から支持を得ている理由として、ここも大きいところです。
フィット感が良い
フィット感がめっちゃ良いです。
それを可能にしているのが、トゥストラップ、アンクルストラップ、ハイバックの3方向から締めることができるFASTECの構造にあります。
トゥストラップの位置を固定して、ハイバックでブーツを後ろから押し込みます。
それに加えて、アンクルストラップが上から下方向へ押し込むので、ブーツがしっかりと固定されます。
この3方向から押さえ込まれることで、ストラップ式では味わえないフィット感を感じることができます。
反応が早い
基本、ベースプレートがアルミのため力が伝わります。
ディスクがアルミの場合は更に力が伝わります。
また、3方向からホールドされることにより、ブーツの反応がバインディングにすぐに伝わります。
更に、ワイヤーによるブーツとハイバックの密着、ベースプレートとハイバックの連結によりハイバックを使わなくとも少ない動きでつま先が起き上がります。
足裏感覚を感じ取りやすい
アルミのベースプレートは薄いので、足裏感覚を感じ取りやすいです。
雪面の状態を察知することで、あらゆる状況に対応がしやすくなるでしょう。
着脱が早い
リアエントリーの利点と言えば着脱の早さでしょう。
パウダーや朝一のピステンバーンをいち早く滑りたい方や、滑る本数を稼ぎたい方には最大のメリットですね。
SP-UNITEDバインディングの気になるところ
ブーツとの相性がある?
ブーツ次第で使えないということはありませんが、ブーツとの相性はあります。
やはり兄弟ブランドということもあり、HEADのブーツはカカトのフィット感が良いです。
反対にDEELUXEはカカトが他のメーカーより後ろに出っ張っているので、着脱の関係上、完全にフィットさせることが難しいです。
このようにブーツによって形状や横幅などの関係があるので、相性の良し悪しはあります。
初心者には向かない?
残念ながら全くの初心者におすすめはできないです。
理由は、2つ。
・セッティングが難しいこと
・座ると着脱がやりにくいこと
にあります。
道具をいじれる方や、立ってバインディングを装着できることが必要になりますね。
スケーティングやリフトがやりにくい?
スケーティングも人によってはやりづらくなるかもしれません。
カカト側の方でスケーティングする方にはハイバックが邪魔になってしまいます。
リフトに関しても、慣れてない人にとっては邪魔に感じる可能性もあります。
どちらも慣れてしまえば問題はないでしょう。
足が疲れやすい?
アルミベースの場合、薄いのと衝撃がダイレクトに感じるので足裏から疲れやすいです。
また、各箇所からホールドされるので足に負担が出やすいです。
慣れると大したことないですが、最初は疲れるかもしれません。
アルミディスクはビスがズレやすい?
アルミディスクの場合、ワッシャー(ビス留め用の円盤)が鉄のため、お互いが干渉しあって滑ってしまうことがあります。
滑走中にズレると感覚が変わってしまうので、避けたいところです。
「体重が重い方」や「力が強い方」、「ビスを留める力が弱い方」が特に起こりやすい現象です。
解決策は、
・キツくしっかりとビスを固定すること
・定期的にビスを留めること
です。
トゥストラップがドラグすると外れる?切れる?
ドラグで起きる現象に関しては、スタンダードとマルチエントリーで異なります。
スタンダードの場合、バックルが外れてしまうことがあります。
バックルは簡易的に留めているだけなので、ドラグし続けると外れる可能性はあります。
また、マルチエントリーの場合は、ストラップのギザギザ(ラダー)の部分が切れてしまうことがあります。
マルチエントリーの場合は、ラチェットをギザギザの部分に取り付けるため、ギザギザのパーツが長く設計されています。
パーツが長いので、ドラグする可能性も高くなりますし、ギザギザのため薄い部分は折れやすいです。
そのため、負荷をかけ続けるとストラップが切れることがあります。
対策としては、結束バンドなどを活用して負荷を与えにくくすることですね。
SP-UNITEDバインディングの各モデル紹介
MOUNTAIN
22-23 SP UNITED MOUNTAIN MULTIENTRY
ハイレスポンスモデルのMOUNTAINは、パウダーの中での動かしたいときに動かせる、を可能にしてくれます。
更にカービングでは、アンクルストラップのおかげでトゥサイド方向へレスポンスが良い。
パワフルなライディングをしたい方におすすめです。
SLAB ONE
■STANDARD
22-23 SP UNITED sLAB ONE STANDARD
■MULCHENTRY
22-23 SP UNITED sLAB ONE MULTIENTRY
2022-23モデルで、マルチエントリー以外にスタンダードモデルがあるのは SLAB ONEだけ。
SLAB ONEは、MOUNTAINとアンクルストラップが違うだけで他は同じです。
アンクルストラップは、真ん中にスリットが入っていることで足首を曲げやすく出来ています。
また、左右方向への可動域も確保したオールラウンドなモデルです。
CORE
22-23 SP UNITED CORE MULTIENTRY
近年で一番変化の大きいモデルとも言えるのがCORE。
数年前にハイバックが変わり、よりオールラウンドに使えるようになりました。
更に、ストラップもホールド感の強いものに変更され前後方向へのレスポンスが向上。
SLAB ONEに引けを取らないモデルです。
PRIVATE
樹脂ベースでは、上位モデルのPRIVATE。
CORE同様にハイバックとストラップが一新され、初中級者だけではなく、あらゆるユーザーに対応できるモデルになっています。
足元をルーズにスタイルを出しつつ、ハイバックとストラップで反応を良くしたハイブリッドなモデルになりました。
FT360
FT360とPRIVATEの違いは、EVAベースパッドが無いことと、アンクルストラップのラチェットが付いていないことです。
ラチェットが無いために装着後に微調整ができないので、フィット感は劣るでしょう。
おそらくスノーボード始めたてをターゲットにしたモデルかと思います。
最後に
長年使ってきたSP-UNITEDなので、力説しちゃいました。
SP-UNITEDのバインディングの良いところは何と言ってもコンパクトにできる点です。
恐らく、全てのフリースタイルバインディングで一番かと思いますね。
また、筆者は今までSLAB ONEやMOUNTAINをメインに使ってきましたが、次使うなら新しいCOREを選びたいところです。
新しいストラップが気になりますし、全体のバランスが良くなっているのが気になるからです。
また、実はSLAB ONEの新しいハイバックよりも昔のハイバックのほうが好みだったりします。
新しくなって、確かに良くなった部分はありますけどね。
この昔のハイバックと同じくアルミパーツの無いハイバックということで、COREを使ってみたいです。
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