今回は、長年愛用してきたSP-UNITEDバインディングのSLAB.ONE(エスラブ ワン)とMOUNTAIN(マウンテン)について性能をレビューしていきます。
このSLAB.ONEとMOUNTAINの違いと、使ってきた感想をお伝えします。
長年使ってきたからこそ気付いたことを詳しく説明しています。
このバインディングは、ブーツの相性とセッティングさえ良ければ唯一無二のフィッティングを体感できますし、何よりドラグしにくいので板を立てるのに最適なバインなんです!
是非このバインディングの良さを知ってください。
また、今まで使ってきた方もこの記事を読めば、相性が合わなかった理由がわかるかもしれません。
なお、SP-UNITEDの基本構造については下記の記事に詳細を書いています。
そのため、構造については割愛してパーツについて説明しています。
リアエントリーについてわからない方は、過去の記事から読むと詳しく分かりますよ!
SP-UNITEDのSLAB.ONEの基本性能
SP-UNITEDのSLAB.ONEの基本性能をお伝えします。
SLAB.ONEに関しては、2022-23モデルもスタンダードとマルチエントリーの2種類が予約できるそうです。
■STANDARD
22-23 SP UNITED sLAB ONE STANDARD
■MULCHENTRY
22-23 SP UNITED sLAB ONE MULTIENTRY
ハイバック
SP-UNITEDのSLAB.ONEには、【HC PRO ハイバック】が使われています。
このハイバックの注目すべきところは、根元にアルミのヒールカップが装備されているところでしょう。
このアルミのヒールカップが別で装備されることで張りが出ます。
なお、ヒールカップと言っても、ハイバックの一部のパーツです。
このハイバックは、単体だけだとそこまで硬くありません。
横方向にも縦方向にも粘りがありながら柔軟に動く感じです。
※GIF
左右方向には、根本からハイバック全体にかけて捻れます。
縦方向には、適度な張りはありつつも手で力を入れると曲がる程度の硬さです。
次に、アルミのヒールカップを装備して硬さを確かめてみます。
※GIF
当然ですが、アルミのヒールカップを組み合わせることで強い剛性を得られました。
左右方向に関しては、根本は捻れず、上部のみが左右に捻れます。
縦方向には、上部の硬さは変わりませんが、根本が硬い分、力の伝わりが早い感覚はあります。
ハイバックのヒールカップの位置が高かく出来ているため、脱着がしやすいです。
脱着時にブーツとヒールカップとの隙間が数年前のモデルよりも大きくなったため、脱着がしやすくなっています。
※GIF
●脱着がしやすい
ベースプレート
ベースプレートには、【SLABベース】が使用されています。
アルミ素材で薄く出来ています。
薄くともアルミなので、強度においてもしっかりとしています。
更にアルミの硬さにより、板にパワーをしっかりと伝えることも可能です。
その上、EVAパッドも装備しています。
つま先側には力を伝えやすいように薄いパッドが、カカト側にはジャンプや凹凸による衝撃を緩和できるように厚めのパッドが選択されています。
アルミディスクが装備されているので、板とのダイレクト感は更に感じます。
また、アルミディスクのビスホールが縦に長い穴になっているのでセンタリングの微調整が可能です。
●アルミベース、アルミディスクにより力がしっかりと伝わる
●EVAパッド装備で衝撃吸収性も考慮
アンクルストラップ
アンクルストラップには、【ULTRALIGHT 3D ストラップ】が装備されています。
ULTRALIGHT 3D ストラップは、真ん中にスリットが入っているため、足首を使いやすく出来ています。
更に左右非対称のため、内側にひざを入れやすく、外側には適度に固定してくれます。
なお、SLAB.ONEは2022-23モデルも【スタンダードタイプ】と【マルチエントリータイプ】があります。
スタンダードタイプは、リアエントリーのみ。
マルチエントリータイプは、リアエントリー式とストラップ式どちらでも脱着が可能なモデルのことです。
●左右非対称で内側にひざを入れやすい
トゥストラップ
トゥストラップは、【スタンダードタイプ】も【マルチエントリータイプ】の2タイプがあります。
スタンダードタイプに関しては、ラチェットが付いておらず、左右をバックルで固定します。
マルチエントリータイプは、ストラップ式での脱着が可能なので、ラチェットが付いています。
双方の違いは、この他にも形状にもあります。
真ん中の穴の大きさが異なり、上下の生地の広さにも違いがあります。
SP-UNITED MOUNTAINの基本性能
SP-UNITEDのMOUNTAINの基本性能をお伝えします。
22-23 SP UNITED MOUNTAIN MULTIENTRY
ハイバック・ベースプレート
実は、MOUNTAINのハイバックとベースプレートは、SLAB.ONEとまったく同じものを使っています。
違いがあるのは、アンクルストラップのみ。
ハイバックとベースプレートは先程説明したので割愛します。
ストラップ
アンクルストラップには、【MOUNTAIN ストラップ】が装備されています。
MOUNTAIN ストラップは、足首を広い範囲で覆い、反応を良くしています。
硬さに関しては、ガチガチに硬いわけではなく、適度な柔らかさがあるので足首に馴染んでフィットします。
なお、2022-23モデルよりマルチエントリータイプのみになるそうです。
また、トゥストラップはSLAB.ONEと同一のものを使用しています。
●トゥストラップはSLAB.ONEと同じ
SP-UNITEDのSLAB ONEとMOUNTAINをレビュー
ここからは、SP-UNITEDのSLAB.ONEとMOUNTAINをレビューしていきます。
総評
SP-UNITEDは、バインディングがコンパクトで、ドラグしにくいのが最大のメリットです。
足が大きい方、アングル角度を横向きにする方、板を立てたい方、細い板を使う方におすすめですね。
また、フィット感がかなり良く、ブーツとバインディングが一体化したかのような感覚が得られます。
他にも反応が早いことや足裏感覚が良いこと、カントが入っていることなど機能性が充実しているのもSLAB.ONEとMOUNTAINの良いところです。
●フィット感がかなり良い
●反応が早く、足裏感覚が良い
FASTECで脱着が早い
SP-UNITEDの特徴的とも言えるFASTECシステム。
ハイバックだけではなくて、アンクルストラップも可動します。
脱ぐときには、ハイバックを後ろに倒すことでアンクルストラップのバックルが勝手に緩んで、すぐに脱げます。
装着時には2アクションになりますが、バインディングを上げて、アンクルストラップのバックルを締めるだけです。
この脱着の早さは、朝のパウダー狙いや、とにかく早く滑りたい方には優位に働きますね。
バインディングとブーツの一体感が凄い
先程のFASTECシステムにより、
トゥストラップとハイバックで前後からホールドし、
更にアンクルストラップを上から下へホールドします。
この三方向からの締め上げにより、ブーツを全方向から包み込むようにフィットします。
全方向から強いホールド感がありつつも、適度な柔軟性のあるアンクルストラップを使うことで前後左右へ動けるようになっています。
多少自由度よりもホールド力の方が強い傾向にありますが、その分一体感も強いです。
なお、SLAB.ONEは、アンクルストラップにスリットが入っているので足首を曲げやすいです。
MOUNTAINに関しては、足首を広く覆うので前後の可動を少し制限されますが、トゥサイド側への反応は良いですね。
●SLAB.ONEのアンクルストラップは足首が曲げやすい
●MOUNTAINのアンクルストラップはトゥサイドに反応が早い
微量にカントが入っている
SLABベースには、カントが入っています。
と言っても、DRAKEのバインディングと比べるとカントの量は少ないですね。
それでも、カントが入っていることで膝の負担が少なくなります。
足裏感覚が感じやすい
足裏感覚が感じ取りやすいですね。
先程のベースプレートの画像を見てもらうとわかりますが、かなり薄いです。
更に、素材がアルミで出来ています。
そのため、板へパワーも伝えられますが、その分衝撃もキャッチしやすいです。
良くも悪くも雪面状況をダイレクトで感じ取ることができます。
反応が早く、パワーが伝わる
SLAB.ONEとMOUNTAINは反応が早く、板にパワーが伝わります。
その理由は
・FASTECのホールド力
・ワイヤーによるベースプレートへのダイレクトな動き
・アルミパーツ
にあります。
FASTECの三方向からのホールド力で一体感が強いので、ブーツが動けば自ずと早く反応します。
ベースプレートの真ん中に固定しているワイヤーをハイバックに繋げています。
これにより、ハイバックを押したときの力をワイヤーを通して、つま先に近い位置からベースプレートを引き上げます。
更に、ヒールカップがブーツと密着しているので、ワイヤーとヒールカップの二点でベースプレートを引き上げてくれます。
アルミのヒールカップによりハイバック自体のレスポンスも良くなっています。
また、
・アルミのベースプレート
・アルミディスク
により、板にパワーを伝えやすいです。
このように反応の早さとパワーが伝わりやすいこともSP-UNITEDの特徴の一つです。
●ワイヤーがベースプレートを引き上げてくれる
●アルミ素材を使うことで力が伝わりやすい
ドラグしにくい
ドラグはしにくいです。
理由は、コンパクトになるからです。
25cmのブーツに装着して、別のストラップ式バインディングと比較してみましょう。
見比べてみると、ハイバックのヒールカップの位置がSP-UNITEDのほうが高いです。
そして、本来はブーツよりもヒールカップのほうが出っ張りますが、SP-UNITEDのほうはヒールカップよりもブーツのカカトが出っ張っています。
これにより、ヒールカップの存在分コンパクトになっていますね。
なお、SP-UNITEDのほうはハイバックの位置をもっと内側に入れられる調節幅があります。
ブーツサイズが小さければもっとコンパクトにできます。
セッティングが細かくできる
SP-UNITEDのバインディングはセッティングが細かくできます。
それだけパーツが細かく分けられているので、工作好きな方やセッティング厨の方には最高のバインディングとなるでしょう。
その反面、初心者には難しいとも言える部分ではありますね。
なお、バインディングのサイズさえ気をつければ、センタリングも出しやすいです。
重量
・SLAB.ONE…約968kg
・MOUNTAIN…約971kg
どちらもディスクとビスを付けての計量であり、スタンダードタイプです。
計量器がちゃんとしたものではないので誤差はあるかと思いますが、2機種を比べるとMOUNTAINのほうが若干重いです。
この2機種はアンクルストラップの違いなので、MOUNTAINのほうがストラップが大きい分、重さにも影響がありますね。
ちなみにディスクの重さも関係してきます。
4つのディスクを計量してみました。
・SP-UNITEDの現行アルミディスク…約84kg
・SP-UNITEDの数年前のアルミディスク…約59kg
・SP-UNITEDの樹脂ディスク…約62kg
・DRAKEの樹脂ディスク…約54kg
こうして見比べるとDRAKEバインディングの樹脂ディスクが一番軽く、現行のアルミディスクが一番重たいですね。
また、数年前のアルミディスクは現行よりも軽かったです。
現行のほうが密度が高い分良いところもありましたが、その分重量も増えたとも言えますね。
●ディスクは数年前のアルミディスクが軽かった
SP-UNITEDのSLAB.ONEとMOUNTAINを使用して気になったところ
セッティングができないと本領を発揮できない
SP-UNITED全般に言えることですが、セッティングがかなり重要です。
セッティングが上手くできていないと…
「つま先方向へ動くときにカカトが激しく浮く」
※GIF
「カカト方向へ動くときにヒールカップが動く」
※GIF
などで、逆に反応の悪いバインディングになります。
ここは注意しなければいけません。
セッティングに関しては、ハイバックの位置やワイヤー位置の調整がカギになります。
また、ブーツの相性も少なからずあります。
知る限りですと、DEELUXEのブーツはカカトの出っ張りがあるため、最大限にフィットさせると脱ぐときに苦労します。
脱着を考慮しなければいけないので、全力でフィットさせられないのが難点です。
反対に、HEADのブーツはカカトの横幅や形状が良い感じにフィットしますね。
●ブーツとの相性もある
SLAB.ONEはトゥサイドがちょっと弱い
SLAB.ONEは、トゥサイドのカービングターンをするとき、足元が少し不安定に感じることがあります。
理由は、アンクルストラップの柔軟性に原因があると考えています。
アンクルストラップが柔軟なため、体重を乗せた際に折れ曲がりやすくなります。
そのため、カカトとヒールカップに少し隙間ができてカカトが浮く現象が起きることがあります。
※GIF
実際に見ると、多少ですけどね。
また、相性の良いブーツを使った上で、かなりしっかりとセッティングすればカカト浮きは減ります。
なお、MOUNTAINのストラップにすることで、多少緩和されます。
または、ブーツ自体を硬いものを使うこともアンクルストラップの折れ曲がりが緩和されるので、対策の一つです。
●MOUNTAINにしたり、ブーツを硬くすることで緩和できる
ワンサイズ大きくなった
数年前に現行モデルにアップデートされたことで、サイズ感がワンサイズ上がった感じがします。
理由は、「ハイバックの変更」、「ワイヤーの長さ」にあると考えています。
ハイバックが新しくなったことで、前モデルと同じセッティングだとフィッティングが合いませんでした。
ブーツが小さい人に関しては、最大にコンパクトにしてもセッティングを合わせられないという話も聞いているほどです。
兄弟ブランドのHEADのブーツのアウターが大きくなったことと関係しているのか疑うところです。
また、ワイヤーが約1.9cm長くなりました。
SP-UNITEDはワイヤーが肝なので、これが長過ぎるとフィッティングが悪くなります。
現行モデルを使っている方は、できることならハイバック変更前のモデルのワイヤーを移植したほうが良いです。
●ワイヤーは前のモデルのものを移植したほうがフィッティングが良い
パーツが破損しやすい
筆者の感覚ですが、SP-UNITEDはパーツが破損しやすいような気がしています。
実際にトゥストラップが折れたり、アンクルストラップが切れたり、アンクルストラップのバックル側の受けネジが割れる、ワイヤーが傷む、フォワードリーンが壊れる、ベースが割れるなど様々ありました。
対策としては、手入れをしっかりとするしかありません。
使用後にバインディングを板から外して水滴を拭いたり、バインディングを解体したときにネジ部分にグリスを塗るなどすることで、ある程度は長持ちします。
それでも、パーツが多いバインディングですので、破損することはしょうがないことでしょう。
●水滴を拭いたり、ネジにグリスを塗るなど手入れをすることで軽減できる
ブーツを傷めやすい
ブーツを傷めることがあります。
部位で一番多いのは、カカトです。
理由は、脱ぐときにヒールカップがカカトのソール部に引っ掛かることがあるからです。
※GIF
引っ掛かり続けると、最終的にはブーツのソールが剥がれてしまうこともあります。
ただ、今のSLAB.ONEとMOUNTAINのハイバックはヒールカップが高いので、このデメリットは少し緩和されました。
一昔前のハイバックのときは特によくあることでしたね。
●現行モデルは緩和された
フットベッドの雪が凍ると履きにくくなる
リアエントリーの弱点とも言えるのが、フットベッドに付く雪です。
リアエントリーは基本的に事前にセッティングをして装着します。
そのため、雪がフットベッドにくっ付いてしまうとセッティングに狂いが生じて履きにくくなります。
更にカービングなどをしていると、足下の雪を踏みつけて凍らせてしまうことがあります。
すると、氷は取りにくいし、バインディングを装着しにくいしで、装着不備が生じてしまいます。
今は、マルチエントリーになってストラップ式のようにも着けられるので、このデメリットの対策が講じられていますね。
●マルチエントリータイプなら雪が積もっても装着できる
SLAB.ONEとMOUNTAINどちらを選べば良いの?
SP-UNITEDのSLAB.ONEとMOUNTAINをどちらを選べば良いのかと言いますと、正直好みです。
違いはアンクルストラップの差だけですからね。
自由度の高さを重視するならSLAB.ONEをおすすめしますし、
レスポンスを重視するならMOUNTAINをおすすめします。
あと、SLAB.ONEだから反応が遅いってことはありません。
フィット感は良いので反応もしっかりとしてくれます。
反対にMOUNTAINだからと言って足首が動きにくいということもないです。
使い始めは硬めですが、馴染むとMOUNTAINでも足首は動きます。
ということで、好みの差ですね。
他に判断基準として考えるのであれば、
体重が軽めの方やトリックなどもやりたい方はSLAB.ONEの方が相性が良いかもしれないです。
反対に体重が重めの人や脚力が強い人はMOUNTAINのほうが相性が良いかもしれないですね。
他には、カービングでも上下や前後に動きたい方はSLAB.ONE。
カービングで傾く量を多く取りたい方や板を立てたい方はMOUNTAINという判断の仕方もありますね。
最後に
SP-UNITEDのSLAB.ONEもMOUNTAINも未だに筆者の好みのバインディングです。
ブーツのフィット感や足裏感覚、コンパクトにできる利点などはかなり好みですね。
現在違うバインディングを使っている理由は、金額とブーツとの相性です。
SLAB.ONEとMOUNTAINは値段が高いので、破損したときの替えが利きにくいのが難点です。
また、SP-UNITEDと相性が良いブーツと言えばやはりHEADなのですが、EIGHTBOAというブーツのアウターが大きいので好みでないのです。
こう言った点で別のバインディングにしています。
しかし、来シーズンモデルに改良されるCOREが気になっていますね。
アンクルストラップやハイバックの剛性感などトータルバランスが良さそうですし、金額もまだお手頃なほうです。
評判次第ではまたSP-UNITEDを使うかもしれないですね。
コメント
中古ですが美品の21ー22モデルを入手し、今冬からSLAB-ONEを使う予定です。昔Switch、昨年CLEWを使って以降、3種目のステップインです。CLEWは、片側1150gくらいと重く、なによりフォワードリーンを入れると装着困難になるので1回使用でやめました。そこで、いろいろ調べてSPが一番良さそうに思えたので欲しくなり、購入に至ったわけです。
SPについて調べている中で、イッチーさんのブログにたどり着きましたが、壊れやすい部品など、実際に使ったユーザー目線での記事大変参考になりました。他の記事もいろいろ参考にさせていただきます。